デンシャに乗って出かけよう

いつの時代でも鉄道マニアはいるものである。
先の大戦中、鉄道が軍事機密だった時代においても車番を記録していたという人がいたというくらいである。

これはそんな鉄道マニアのお話。

一人の鉄道マニアが駅にやってきた。これからデンシャに乗るのだ。

草が生い茂る長いホームにやってきたのは3両編成の車両だ。
「デンシャ」と言われ親しまれているが、電気では動かない。

回転クロスシートの車内に座るとおもむろに車両の絵を描きだした。
カメラではなく、こうして紙に絵を描くのだ。

のろのろと「デンシャ」は単線を行く。「デンシャ」に乗っているのは彼一人しかいない。
手入れがされず荒廃する家屋や線路脇の生い茂っている草が見える。そこをバスが通っていくのだ。

『毎度デントラインをご利用いただきありがとうございます。この列車はシブヤ行きです』

「……のどかだなあ。昔は10両繋いでも席に座れない人がいっぱいいたと聞いたことあるけど信じられないな」

「次はナガツタです。ヨコハマラインは乗り換えです」

鉄道に乗るというのが非日常になった時の、そんなおはなし。

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