城中電鉄 

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600形


▲600形(絵:きんちゃん

 600形は100形を置き換える形で1989年に登場した18m級3扉のステンレス製車両です。

概要

導入の経緯

 100形はよく走ってくれました。しかし老朽化はいかんともしがたく、また、冷房化も不可能ということで、置き換えが必要とされました。そこで車輌を新造することとなりました。当初は500形までと同様にバーニア抵抗制御のはずでした。しかし、製造元の川崎車両によれば「地方私鉄におけるVVVFインバータ制御方式の効果実験」を行うことを条件に、製造費用を安くしてくれるということを聞かされました。川崎車両からすれば実車を使用した実験を行うことができ、城中電鉄からすれば安く車両を導入できる、すなわちWIN-WINの関係が出来ることになります。地方私鉄である城電において製造費用を安くしてくれるというのは非常にありがたいことなのでVVVFの導入を決定しました。
 そんなこんなでVVVFインバータ制御を使用した車両が城中電鉄に導入されました。VVVFインバータは城中電鉄の通勤車両に大きな革命をもたらしました。VVVFインバータの大きな特徴として、電動機の大出力化、および歯数比を大きくすることができるということが挙げられます。今までの直流電動機では最高が150kW程度でしたが、誘導電動機では200kW以上も珍しくありません。また、ギア比を大きくすることにより、低速性能を高くすることができます。すなわち普通車に特化することができるのです。

車輌概説

車体

 車体長は300形と同様に18mとされました。これは、オイルショック時のような殺人的なラッシュが終わり、20m4ドアにしなくても混雑しないだろうという考えです。
 600形はスペックを見れば分かるとおり、通勤用電車に革命を与えました。しかし、これを実現するために制約が課されました。「科学のハッテンには犠牲が付き物デース」(醍丈夫氏・談)というわけです。高速運転をするためには車体が重いということは許されません。そこで、城電としては初のステンレス車を導入しました(ちなみにアルミにしなかったのは、川崎車両の主力がステンレス車輌だったからというだけです)。
 ステンレスの魅力の1つに「塗装の省略」というのがあります(塗装の手間が省けると全般検査での工程が1つ減るのです)。実は城電でも無塗装が検討されました。しかし、現場からは「塗装工の仕事を奪ってどうする」「お前は露出狂か」などといった苦情が来たそうです。塗装に対して誇りを持っているからこそ言える発言だと理解し、また、城電の車両である塗装は遠くからでも見えるようになっており、安全面から考えても塗装を継続することとなりました。
 前面ガラスについては城電の通勤用車両としては初のパノラミックウィンドウを採用していますが、直線ガラスと円柱ガラスの組み合わせで安く仕上げたり、窓も安いユニット窓の一段下降式(車両がステンレスになったため初採用です)にしたりと、足回り以外はコストダウンが図られています。

内装

 一般的なロングシートです。客用扉は内部においては無塗装となっています。

主要機器

 主電動機はTDK-6110Aを採用し、500形で110kWだったモータ出力を一気に165kWに上昇(これでもVVVFとしては低いくらいというから恐れ入る)させました。実際はこれ以上でもいいのですが、変電所等の設備もそんなに大きくないため出力を落とさざるをえませんでした。上げたのを落とすくらいだったらそのまま165kWで使えばいいということでこのモータで落ち着きました。また、車両メーカーの実験台的車両ということもあったというのもあります。歯数比は普通電車限定のため6.53となっています。
 また、これだけの性能があるということは最高速度が90km/hでは低いくらいです。そこで営業最高速度を100km/hに認可申請を行い変更しました。歯車比が高いということは高速域では苦しいのですが、最高速度100km/hなら大丈夫だと見切ることにしました(許容最高定格速度は106キロです)。加速度はα=3.0km/h/s、β=3.8km/h/s。この数字はインダクションモータゆえにできる芸当です。
 電動車は冗長性を確保する目的で1C4Mとなっています。制御装置は前年の1988年に、東急電鉄1000系で導入された方式を導入しています。このことからも、600形はいわゆる「実験車」だったことが伺えます。
 駆動方式についてはWN駆動方式を導入するか検討されましたが、保守側よりなるべく機器は統一したいとの方針が寄せられたため、500形に引き続きTD平行カルダン駆動方式を採用しました。TD平行カルダン駆動方式が東洋電機の製造なのでわざわざ変える必要もないでしょう、というのが真相のようです。

沿革

 1996年まで製造され、順次100形と置き換えられていきました。当初はVVVF独特の音が気になるという人も多かったようですが、今ではあまりそのような声は聞かれません。人は順応するものなんですね。逆に東洋GTO自体が珍しくなってきたためか「音鉄」と呼ばれる鉄道ファンが走行音を録音しているのを度々見かけることができます。そんな600形は現在も城電の主力車両として活躍を続けています。
 さて、製造は終了しましたが、2012年よりGTO-VVVF制御からIGBT-VVVF制御方式(製造は三菱です)に換装することが決定しました。「壊れてないのになぜ?」と思うかもしれませんが、すでにGTO-VVVF制御自体が古くなっており、部品がないという状況になってきたのです。「壊れる前に手を打とう」、というわけです。
 また、保守部門からは「700形に使用しているIGBTに統一して欲しい」という声がちらほら聞こえてきた頃でもありました。そこで、新造が一段落する2012年より変更することになったということのようです。また、この機器更新に合わせてLED式の旅客案内表示器を千鳥配置で設置する予定です。


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